「雅子ストーリー」

前回【17話】は中学の入学式で校長の質問に

答えられた女子のお弁当がいつも豪華で、

そこからお弁当事情をお話しいたしました。

「例にもれず、私もよく食べ、よく動き

卒業の頃には母と同じくらいの

身長になっていたと思います。」

で終わっています。

前回のお話はこちらからどうぞ

【18話】

中学生になると、殆ど全員がクラブ活動

に参加することになります。

クラブの見学があった時、体操クラブを

まず見にいきました。

オリンピックで見た体操のチャフラフスカ

が素敵で、特に平均台の演技が目に焼き

ついていたからです。

体育館は仕切られて教室になっていて

その空いているスペースに平均台が

置いてあり、体操部が練習していました。

なんだかあまりピンと来ませんでした。

その後でみたのが卓球クラブでした。

その年の卓球クラブには三年生がいなくて、

部員は2年生だけでした。

赤いユニホームがカッコよく何故か

卓球に心強く惹かれてしまったのです。

迷って迷って卓球クラブに入ることに

しました。

一年生が多く入ってました。

火事で焼け出される前に隣りに住んでた

幼なじみや、同じピンクのアパートの

幼なじみも一緒でした。

一年生の女子達は意気投合して

仲良くなりました。

誰が言い始めたのか、3年の男子部員の

誰々さんが好き憧れると始まり、

1人ずつ誰を憧れる相手にするか決める

ことになったんです。

可笑しいでしょう?

また発想が中学一年生らしくて、

可愛いと思いませんか?

3年の男子の名字の1番上の文字をとって

例えば佐藤だったら「さ」鈴木だったら「す」

と呼び、今日は「さ」を何回見たとか、

会ったとかたわいない遊び感覚の

恋でした。

私が選んだのは、五十嵐という先輩で

「い」と読んでいました。

カーキ色のレインコートをきちんときて

学生帽を深く被って登校する姿を、毎朝

プレハブ教室から眺めていたものです。

特にハンサムでも、カッコいい訳でもなく

(ごめんなさい)

何となく選んだのですが、恋に恋する年頃

本当に好きになったみたいな感覚に

落ちていくのでした。

あれが初恋?と言える物だったのかな?

試合の時は皆んなで応援してましたが、

其々が其々の好きだと言った先輩目当て

での応援でした。

うちの学校の卓球クラブはどちらも強く、

女子は2年生でしたが、確かどちらも

春の大会で優勝しました。

女子が終わり、男子の決勝戦の時は「い」

が出て来た時に思いっきり応援しました。

そんな淡いプレ初恋も三年生の卒業で

ほんわかと終わってしまったのでした。

私が本気で好きだと思った男子は

三年生になった時、何かの委員会で

一緒になった男子でした。

多分あれが私の初恋だったと思います。

委員会で気さくに話し、廊下で会えば

挨拶しあってました。

特に付き合ったことはなく、

クラスの女子と付き合ってると

聞いていたので、片想いでした。

優しく鼻筋が通って端正な

顔立ちの男子でした。

きっと大人になったら素敵になって

いたことでしょう。

でも、高校一年のとき、オートバイで

亡くなってしまったのです。

お葬式には行きませんでした。

付き合っていた子が半狂乱だったって

誰かが言ってました。

やっぱり付き合ってる女子がいたんだ

モテてたからね。

とても悲しかったのに不思議と

涙は出ませんでした。

私の初恋はプレ初恋に始まり、

本気で好きだと思った男子の

事故死で終わってしまいました。

それから高校卒業して短大に行く

まで誰かを好きになることはありま

せんでした。

~続く~