前回【5話】では
下駄を鳴らしてタッタッタと走ってきた芸者さんが粋でカッコ良くて
幼いから粋っていう言葉は知らなかったけれど素敵だったんですね
大きくなったら芸者さんになりたいと母に宣言した私。
生まれて初めて大人になったら
なりたいと思ったこと書いてます。
「母は呆れかえってましたが、私にはその意味がわからなかったのでした。」
で終わっています。
【6話】
朝は同じ幼稚園に通う友達と一緒に行くこともありました。
同じ幼稚園の子、誰だったかな?
確かあの子だったと思うのですが、よく思い出せないんです。
その日は、その子と一緒に幼稚園へとバス停まで歩いていました。
どんな話しをして歩いていたのでしょう。
二人で話しながら歩いていて、曲がり角を曲がった時です。
目の前に目のつり上がった狐のような顔の女の人が立っていました。
あ、この人は!
と思った途端突然右目のに方になにか刺さったようにひどい痛みが走りました。
私はその女の人に顔を引っ掻かれたのです。
そういえば爪はかなり長かったように思います。
その女の人は、当時近所では有名な
「きちがい」
と言われている人でした。
あられもない格好でふらふら歩き回っていて
どこに住んでるのかも分からない。
今だったら、そういう人は保護するとかするんでしょうが
当時はほったらかしだったのでしょうか。
しかも、「きちがい」なんて呼び方も平気だった頃です。
どうして顔を引っ掻かれたのか訳わからず、何か目の横を流れて
くるのを感じていました。
今だったら通り魔事件ですよね!
どうやってそこから逃げたのか覚えてません。
一緒の友達が
「誰にも、誰にやられたとか言わない方がいいよ」
というので、そのままバスに乗って幼稚園へ行きました。
おそらく顔中血だらけだったと思います。
バスの車掌さんも心配してくれたと思うのですが、
友達がしっかり手を握ってくれて
頑張って何も言わずに幼稚園に行ったんです。
先生がびっくりして飛んできたのでしょう。
そこで初めて火がついたように泣いたのを覚えています。
先生がどうしたの?と聞いても訳を言わずに泣いてる私でした。
友達は何故誰にも言わない方がいいよといったのか?
幼稚園児の浅はかな浅知恵なのか、
私を思いやってくれたのか、
未だによくわかりませんが私は友達の言う通り誰にどうやって
やられたのか言わなかったのでした。
その後そのきちがいと呼ばれた女の人は見当たらなくなりました。
母に聞いても母もよく覚えていないそうです。
突然襲われて、一緒にいた子じゃなくて何故私が引っ掻かれたのか…
そういうことがあってから
今でも曲がり角を曲がる時はちょっと警戒するところがあるのは
そのことがトラウマになってるのかも知れませんね。
これは私が物心付いて初めての試練?となりました。
しかし、目を引っ掻かれなくて本当に良かった!
普通はこんな出来事に遭遇しないのに、
幼い頃は人が経験しなくてもいいことをいくつか経験したのでした。
〜続く〜